一般的には、整理整頓された清潔な部屋が良いとされていますが、なぜ汚い部屋に安らぎを感じるのでしょうか。今回は、その心理を深掘りしていきます。まず考えられるのは、「慣れ」です。長年、散らかった部屋で生活していると、その状態が当たり前になり、むしろ整頓された部屋に違和感を覚えるようになることがあります。これは、心理学でいう「単純接触効果」とも関連があり、接触頻度が高いものほど好感度が高まるというものです。汚い部屋も、毎日目にすることで、無意識のうちに安心感を抱くようになるのかもしれません。次に、「完璧主義からの解放」という側面も考えられます。綺麗好きな人ほど、常に部屋を完璧な状態に保とうとするあまり、少しでも散らかった状態にストレスを感じてしまうことがあります。しかし、汚い部屋であれば、そもそも「完璧」を求める必要がないため、リラックスできるというわけです。これは、「どうせ汚いから、少しくらい散らかっても大丈夫」という心理が働くためと考えられます。また、「自分のテリトリー」という意識も関係しているかもしれません。散らかった部屋は、他人から見れば不快かもしれませんが、本人にとっては、自分の好きなものに囲まれた、安心できる空間です。自分の好きなように物を配置し、誰にも邪魔されない、自分だけの世界を構築できるという点で、落ち着くのかもしれません。さらに、「創造性の刺激」という側面も見逃せません。一見無秩序に見える汚い部屋は、実は、様々な情報や刺激に満ち溢れています。それが、無意識のうちに脳を活性化させ、新しいアイデアや発想を生み出すきっかけになることもあるのです。アーティストやクリエイターの中には、あえて散らかった部屋を好む人もいると言われています。最後に、「過去の記憶との結びつき」も考えられます。例えば、子供の頃に住んでいた家が散らかっていた場合、その記憶が、汚い部屋に対する安心感と結びついている可能性があります。これは、心理学でいう「想起」という現象で、過去の記憶や感情が、現在の状況と結びついて呼び起こされるというものです。このように、「汚い部屋が落ち着く」と感じる心理は、様々な要因が複雑に絡み合って形成されていると考えられます。一概に「悪いこと」と決めつけるのではなく、その背景にある心理を理解することが大切です。
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