2025年9月
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私がゴミ屋敷の扉を開けた日!ケアマネ奮闘記
ケアマネジャーになって二年目の春、私は初めて「ゴミ屋敷」と呼ばれるお宅を担当することになりました。資料には「独居、男性、80代」としかなく、軽い気持ちでインターホンを押したのです。ゆっくりと開いたドアの隙間から見えたのは、足の踏み場もないほど積み上がった古新聞とコンビニ弁当の容器、そして、その山の間から私をじっと見つめる利用者の鈴木さん(仮名)の瞳でした。正直、息が詰まり、一瞬後ずさりしそうになったのを覚えています。「何しに来たんだ」という低い声に、私は準備してきた言葉を何も言えませんでした。最初の訪問は、玄関先で世間話を数分しただけで終わりました。その後も訪問を重ねましたが、鈴木さんは家のことを話そうとせず、私も片付けを促す言葉を切り出せずにいました。転機が訪れたのは、ある雪の日です。私がいつものように訪問すると、鈴木さんがこたつで震えていました。暖房が壊れているというのです。私はすぐに電気屋を手配し、修理が終わるまで一緒にこたつで待ちました。その時、鈴木さんがぽつりと「あんたは、ゴミのこと、何も言わないんだな」と呟いたのです。私は「鈴木さんの体の方が心配ですから」とだけ答えました。その日から、少しずつ鈴木さんの態度が変わりました。過去の思い出や、なぜ物を捨てられなくなったのかを話してくれるようになったのです。問題の解決にはまだ時間がかかりますが、あの雪の日、私はケアマネジャーとして最も大切なことを学んだ気がします。それは、目の前の課題を解決すること以上に、一人の人間の心に寄り添うことなのだと。